朱
世界を染める茜色
どこまでも広がる夕焼け
空を渡る風の匂い
そこは懐かしい約束の場所
向かい合って立つのは
僕と、
君
「大人になったら、また会おうよ」
「この場所で待ってるから」
「ずっと、待ってるから」
それは誓い
二人だけの大切な…
「約束」
「ねえ」
うっすらと目を覚ます。 誰かに肩を揺すられていた。 え…あれ?
「おりないの?」
あ…れ? もう、降りる駅だっけ?
「やくそく…わすれちゃった?」
……約束。 忘れるもんか。 ちゃんと、覚えているよ。
「もう、でんしゃでちゃうよ?」
そっか…降りなきゃ。
発車を告げるベルがホームに響き渡った。 いけない。 あわてて飛び起きて、閉まりかけのドアを走り抜ける。
間一髪、背後でドアが閉じる音がした。 よかった、間に合った。
…………。 ……で、ここはどこだ?
寝ぼけ眼をこすりながら、駅名表示に目を走らせる。 『大槻駅』
……あれ? おおつき…おおつきえき…どこか聞き覚えがある気がするけど、目的地じゃあない。 僕はなんでこんな中途半端な場所に降りてるんだろう。
……たしか、夢を見てたんだ。 いつも見る、約束の女の子の夢。 それから……女の子が… 『やくそく』…って。
やく…そく?
頭に衝撃が走った。 なんであの子、『約束』の事を知ってるんだ!?
少女の幻影に導かれるように 青年が降り立ったのは、 彼が小学六年生の一年間を過ごした町、 大槻町だった。
『過去を覗き見る』自らの力を使い、 青年は無くしてしまった過去を取り戻そうとする。
かけがえのない約束を、思い出すために……